森田療法とは?

 

森田療法とは、今からおよそ100年前(1919年)、精神科医の森田正馬によって創設された神経症のための精神療法です。創設者の独創的な理論に基づき、家庭的雰囲気の中で、臥褥や作業を重視し、健康的な生活態度とともに、自己実現を目的とする段階的系統的、そして総合的な治療法と言えるでしょう。

 

欧米の精神療法では、不安を異常なものとみなし、取り除こうとします。これに対し森田療法では、不安があるのは人間として自然な事であるとし、不安との共存を目指すのです。さらに不安の裏側にある「生の欲望」に着目し、その欲望に沿って今の自分を現実に生かしていこうとします。不安や症状は、こうした努力を積み重ねる中で、次第に小さくなっていくものです。

 

森田療法の大きな特徴は、症状に対して「あるがまま」です。不安や恐怖を取り除こうとせず、不安を持ったままで、症状が気になるままで、やるべきことをいやいやながらでもやっていこうとするところにあります。

また、感情や自分自身に対しても、抑圧したり欺いたり飾り立てたりせず、「あるがまま」であることが求められるのです。

※ 「森田療法の世界」 丸山晋著 から引用しました。

「あるがまま」とは?

 

森田療法の真髄「あるがまま」。では、「あるがまま」とはどういうことでしょう。

『ある』と言うのは「存在すること」。「まま」とは、「そのまま」の意味で、「あるがまま」とは、「存在そのまま」と言うことになります。

太陽は東から昇り、西に沈みます。自然(事実)は私たちの思惑に関係なく、独自の法則に基づいて運動しています。私たちの心も自然(事実)の一部です。

けれども私たちは、なまじ頭が良いために、何でも自分に都合の良いような解釈してしまいます。そしてどんどん、自然(事実)から遠ざかってしまうのです。人の思惑が気になる人は、気にすまいと頑張ります。するとますます人の思惑が気になります。気になることがその人の自然であるのに、気にすまいと言う努力が、ますます「気になる」と言う感覚に意識を集中させるのです。

いくら「火は冷たく、氷は熱い」と思おうとしても、現実はやはり「火は熱く、氷は冷たい」のです。

神経症とはこうした自然の法則に逆らうことで生じます。だから自然の法則に従って生きて行けば、楽に治すことが出来るのです。それを教えたのが「あるがまま」です。

あなた自身も「そのままで良し」。症状や気分のそのままで、やるべきことをやっていくこと。それが森田療法の真髄です。

(文章の一部は「生きる力 森田正馬15の提言」帚木蓬生著から引用しました。)